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- 2021.03.24
<10 降格に伴う賃金の引き下げについて>
プロシード法律事務所代表弁護士の佐藤竜一と申します。本事務所では週一回所内で企業側からみた労働問題について所属弁護士間で研究会を実施しています。本ブログでは当該研究会での議論を踏まえ、企業側の視点からみた労働問題について、随時情報を発信しています。今回は、何らかの理由によって労働者を降格させ、それに伴って賃金を引き下げる場合の留意点についてお話しします。
降格には懲戒処分としてのそれと、人事権発動としてのそれの両方が考えられるところです。双方ともに使用者側が自由にこれを為せるのではなく一定の限界があることに留意をすべきです。懲戒権の発動としての降格の場合は就業規則上の根拠規定が必要で、濫用に当たらないかという観点で有効性が判断されますし、人事権発動としての降格も人事権行使の濫用に当たらないかは裁判になった場合はチェックすることになります。いずれにせよ、どのような理由降格とするかは使用者側で基礎となる事実関係と降格とする理由をしっかり押さえておく必要があります。
降格にともなって賃金が減額される場合は、降格の有効性のみならず賃金減額の有効性が問題になります。裁判になった場合、降格は有効であるが、賃金減額は無効と判断されるケースもあります。
賃金減額も基本給部分の減額を伴う場合と役職手当部分の減額の場合で裁判所の判断基準が変わってきます。一般的には前者の方がより厳しい審査になります。また減額幅が余りに大きい場合は、労働者の生活維持等の観点から大幅な賃金減額は無効と裁判で判断されるケースもあります。
裁判にいおいては具体的事情のもと判断されますのであくまで一例ですが、飲酒運転による免許停止処分等を理由に部長職の労働者を一般職に降格させて2割程度の月額給与額減額を有効とした事例(神戸地判平成3.3.14労判584号61頁)や、看護婦長であった者に対して勤務予定表紛失を理由とする役職手当5万円不支給を伴う平看護師への降格処分について人事権裁量を逸脱して無効と判断した事例(東京地判平成9.11.18労判728号36頁)などがあります。
貴社において、降格に伴う賃金減額について検討していて、リスクを懸念されている場合は気軽にご相談ください。
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